小説「仏教のながれ2」その12

 雨乞いの祈祷などは簡単なものでございます。事前に雲の変化を掴んでいるのですから、この日に雨が降らなければ、次の日もと3日も続けていれば雨など降るのでございます。ここは日本で砂漠ではありません。

 ただ、こんなこともありました。日照りが続く村へ入るときのことでございます。空海が観測していると朝に典型的な朝焼け空になりました。直ちに空海は弟子たちを伴って目指す村へ歩みを進めました。空海と弟子たちが村へ入った頃には雨が土砂降りとなっていました。農民たちの歓喜の声が聞こえてきます。空海と弟子たちは農民たちの歓喜の声を聞き流して何事もなかったようにその村を通り過ぎて行ったのでございます。

 さらに、空海は土木技術も学んでおりましたので、香川県にある満濃池の堤防を作った修築工事にも関わりました。さらに土木技術から山裾の地形を読み解き、空海が杖をつくと泉が湧き井戸や池となったという伝説も残しました。さらに各地に温泉を発見したことも土木技術から派生した知見であります。空海の多彩な才能は全て真言密教の布教と結びついて各地に伝説として残されました。空海伝説は、空海の死後、朝廷から賜った弘法大師の称号により弘法伝説として残されています。(続く)

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