小説「仏教のながれ1」その5

 法華経は漢訳のほかチベット語訳、蒙古語訳、満洲語訳、仏文訳、英文訳、和文訳などの訳文があります。現存する漢訳は「正法華経」「妙法蓮華経」「添本妙法蓮華経」の三つで、鳩摩羅什訳の「妙法蓮華経」が最も優れた翻訳として広く用いられています。この鳩摩羅什は死に際し人々に次のように語ったといわれます。「自分は暗愚であって、しかも不浄の身をもって訳経した。自分が死んだら必ず火葬にせよ。もし、仏法の所伝に誤りがないならば、身は焼けても必ず舌は焼けないであろう。もし舌が焼けたならば、我が訳経も捨てよ」そして死んだ後に火葬にしたところ、舌のみが焼けずに火中の青蓮華の上に遺って、夜中に五色の光を放ったと伝えられています。(続く)

小説「仏教のながれ1」その4

 お釈迦様は8年の歳月をかけて法華経を説き終わり入滅の2月15日に一日一夜で涅槃経を説いて入滅されました。宝寿80歳のことでありました。
 お釈迦様の入滅後、弟子たちはお釈迦様の教えが後世に伝えられなくなることを恐れ、五百人の弟子が集まって互いに教えを暗誦(あんじゅ)して第一回の結集をしました。その後、滅後百年に第2回目の結集を行い、滅後二百五十年ごろ千人の僧を集め第三回の結集を行いました。このころから文字が使われるようにもなりました。さらに滅後七百年ごろ、五百の小乗学者、五百の大乗学者、五百の居士を集めて第四回の結集を行いました。こうしてお釈迦様の教えはたくさんの経文となり、またいろいろな言語に翻訳されて後世に伝えられました。(続く) 

小説「仏教のながれ1」その3

 お釈迦様は菩提樹の下で成道してから42年後、72歳から法華経を説かれました。お釈迦様は法華経の序文である無量義経説法品第二の中で「四十余年。未顕真実」と説かれました。これを聞いた弟子たちは腰を抜かさんばかりに驚きました。今までの四十年余り未だ真実を顕していないと説かれたのです。つまり成道してから今まで真実をあらわしていないと説かれたのです。
 そうして、いよいよお釈迦様は法華経を説き始めました。この法華経では悪人も女人も成仏できる、二乗も成仏できると説かれました。今までは悪人も女人も成仏できない、二乗も成仏できないと説かれていましたので弟子たちはまたまた驚きました。なお、二乗とは部分的な覚りを得て、その低い覚りに安住して他人を救おうとしないエゴイズムにおち入り、お釈迦様の真実の覚りを求めようとしない者のことをいいます。ともかく、弟子たちは如是我聞として教えを暗誦してゆきました。(続く)