独り言「飛行機」

 ずいぶんと昔のことになります。純正律で調律されたバイオリンのCDを聴いたとき「あ、この曲いいな」と感じたのが「ひこうき雲」でした。それから、ユーミンの歌を聴いてやっぱりいいなと思った。さらにジブリ映画「風立ちぬ」のアニメで流され、あらためて空に憧れていたんだなあと思い出した次第です。
 1985年(昭和60年)の夏、会社の研修旅行でヨーロッパへ初めて飛行機に乗ることになった。私たちが研修へ出発する前、8月12日の夕方、羽田空港を出発した大阪行きの日本航空123便が行方不明となった。夜間ということで翌日に捜索が開始され、結局、乗客乗員520名が亡くなった。日本航空123便墜落事故として記録されている。
 一週間後、私は初めて飛行機に乗れるということで、ほとんどこの事故のことは頭になく、成田空港から日本航空のジャンボジェット機に乗りアンカレッジ経由でイギリスのヒースロー空港を目指した。空港に近づくと飛行機は徐々に高度を下げて行き、窓から空港近くの家々がマッチ箱のように見えた。その瞬間「異国に到着だ」と電撃に撃たれたように全身へ喜びが走った。飛行機がヒースロー空港に無事着陸すると拍手が誰からともなくわき上がった。みんなは日航機墜落事故のことを思い浮かべていたのだ。私は不覚にも喜びが勝りそのことを忘れていた。私にとって飛行機は強い憧れであった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA