小説「仏教のながれ2」その11

 雲からは、「おぼろ雲は雨の前ぶれ」、「山に笠雲がかかると雨や風」、「上り雲(北に向かう雲)は雨」、「朝焼けは雨」などです。

 このようなことを空海は書物を読み全て覚えていて、山の上の雲や肌感覚で空気の湿度を感じ取ったりしています。

 翌日、雲が少し速く北へと流れるので典型的な「上り雲」となり、空海は弟子を伴って村に入りました。村の田圃は水が干上がっています。空海は村の長(おさ)に頼まれて雨乞いの祈祷をすることになりました。空海は、密教法具である金剛盤に金剛杵と金剛鈴を前にして仰々しく得意の祈祷を始めました。空海が呪文を唱え弟子たちが唱和し、時々金剛鈴が鳴らされます。

 半刻ほどしてぽつりぽつりと日照り続きの田圃に雨がもたらされてきました。村人たちは歓喜の声を発し、御上人様という声が響き渡りました。(続く)

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