小説「仏教のながれ2」その15

 ここで、空海の学んだ密教の成立についてもう一度考えてみたいと思います。密教はインドで7世紀の中ごろバラモン教やヒンズー教の宗教儀式を取り入れて発展したもので大乘教の傍系の一宗派という位置づけでございました。このように密教の成立は7世紀であり、天台大師は6世紀に現れましたので一念三千の法門は盗みようがありません。

 8世紀に入ってチベットに伝えられた密教はラマ教となり流布されました。また、同時期に密教は唐にも伝えられ、当時の新興宗教として民衆に歓迎され支持されました。まさに空海が長安で見た仏教とはこれでありました。

  お釈迦様が密教について問われたならば「密教を説いた覚えはありません」とおっしゃられるのではないでしょうか。なぜなら、お釈迦様は民衆の中へ入って人々に寄り添い仏教を説かれました。だからこそ成道してから42年間も真実の教えを説かず人々を仏教に導くための方便の教えを説いたのでございます。お釈迦様は人々に寄り添い教えを説いていらしたのですから、密教、すなわち秘密の教えなどを説くひまはなく、その必要もございません。(続く)

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