小説「仏教のながれ2」その22

 それでは、お釈迦様が8年もの歳月をかけてお説きになられた法華経には、お釈迦様の白法が隠れ没した滅度の後についてどのように説かれているのでありましょう。

 妙法蓮華経法師品第十において、お釈迦様は「是の人は、自ら清浄の業報を捨てて我が滅度の後に於いて、衆生をあわれむが故に悪世に生まれて広くこの経を演(の)ぶるなり」と説かれました。ここのところを天台教学を宣揚した妙楽大師は釈して「願兼於業(がんけんおごう)」としています。

 すなわち、修行の功徳によって安住の境界に生まれるべきところを、苦悩に沈んでいる一切衆生を哀れむがゆえに自ら願って悪業をつくり、悪世に生まれて、民衆の苦悩を一身に引き受けて仏法を弘通するのです。では「是の人」とはどの人のことでありましょう。

 妙法蓮華経従地湧出品第十五において、お釈迦様が滅後の弘通を勧められた呼び掛けに応じ、大地の底から湧き出てきたのが無数の三十二相を具(そな)えた金色の菩薩でした。この菩薩たちは地より涌き出たので地涌の菩薩といわれます。(続く)

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