小説「仏教のながれ5」その4

 また、鎌倉武士の間では禅宗(ぜんしゅう)が流行っていました。

「日蓮という僧が禅宗は天魔(てんま)だと言っていたが…」

「わしもそう聞いた。だが、天魔の意味がようわからぬなあ」

 禅宗では教外別伝(きょうげべつでん)・不立文字(ふりゅうもんじ)としてお釈迦様の経文を全て否定しています。お釈迦様の所説に従わず仏法を破壊(はかい)する天魔の所為であるので、日蓮は禅天魔と批判しています。

 お釈迦様は末法において弘教すべきは法華経であるとみずからお説きになられています。その法華経を各宗は先に批判しているのですから、俗な言い方をすれば売られた喧嘩(けんか)を買ったまでで四箇(しか)の格言(念仏無間、禅天魔、真言亡国、律国賊)で反批判するのは当然のことと思います。さらに日蓮はのちに幕府に提出する立正安国論でお釈迦様のさまざまな経文を引用されています。涅槃経には「法華経を弘教する人が、法華経の教えを破戒する者を見て置いて、あやまちを厳しく責めず、相手の罪をあげなければ、その人は仏法の中の仇(かたき)であり、もしよくあやまちを厳しく責め、相手の罪を教えてあげれば、これ我が真の弟子である(筆者の意訳)」とあります。

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