小説「仏教のながれ5」その9

 こうして、翌日の評定で極楽寺良観に雨乞いの祈祷を命じる提案が決定された。祈祷は今日より三日の後から七日間行われると鎌倉の辻々に高札が立てられました。全部の期間を合わせると十日間にもなる。なんとも甘い設定であるが幕府も万が一のことを考えてのことでありましょう。

 ところが、ここで日蓮は良観に申し入れをします。それは、もし良観が七日のうちに雨を降らせたなら、日蓮が良観の弟子となり、もし雨が降らなければ、良観が日蓮の弟子となるということです。こうして良観と日蓮の間に約束事が交わされました。

 6月18日の日の出とともに良観を導師とする雨乞いの祈祷が始まりました。壮大な極楽寺からは護摩を焚く煙がもうもうと上がっています。

 一方、日蓮は勤行唱題をやめて悠然と弟子たちと囲碁をしています。この時の弟子の問いに日蓮は「今、人々が雨を望んでいる時に、どうして雨が降らないようにと祈れるものか。これは薬師経の七難のうちの過時不雨の難が起きたものである」と答えています。

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