小説「仏教のながれ5」その10

 良観の雨乞いは、一日、二日たち、七日たっても一滴の雨も降りません。良観はあと七日の延長を日蓮に申し入れた。しかし、延長の七日がたっても雨が降るどころか暴風が吹くという有り様です。ここに至っても良観は敗北を認めず日蓮への憎悪を募(つの)らせるのでした。

 こうして良観は、日蓮憎しで、裏にまわって幕府要人やその夫人たちに働きかけ、日蓮への弾圧を画策(かくさく)したのです。

 同年9月10日、突然、日蓮は幕府から呼び出しを受けた。日蓮が侍所(軍事・警察の役所)に行ったところ、所司の平左衛門尉頼綱(へいのさえもんのじょうよりつな)の尋問を受けました。この時の平左衛門尉は、日蓮の諫めに聞く耳を持たず、御成敗式目の「謀反の科」とするための言質(げんち)を取るべく詰問(きつもん)してきた。それは既に御成敗式目の「悪口の科」で伊豆流罪にしているので今度は何としても流罪ではなく死罪にしたいがためでありました。

 取り調べの後、平左衛門尉は執権の北条時宗に尋問の報告をし、直ちに日蓮を捕え、斬首する意向を述べました。時宗は、直ちに斬首はまずいので、表向きの佐渡流罪を前提とする佐渡守宣時(さどのかみのぶとき)の預かりとするよう命じた。

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