小説「仏教のながれ5」その11

 二日後の昼下がり、平左衛門尉は軽武装した兵五百人を引き連れて松葉ケ谷の草庵に向かった。日蓮は、草庵を兵たちにさんざん荒らされたあげく捕縛(ほばく)され馬に乗せられ、若宮小路を通って鎌倉市中の人々に見せつけられて北条宣時邸に移送された。

「あれ、見ろ、日蓮が捕縛され馬で移送されている」

「日蓮もこれまでだな」

 それにしても、日蓮一人を捕縛するのに軽武装の兵五百人とは大層な念の入りようです。平左衛門尉の日蓮への憎悪は物に狂ったようでありました。

 そしてこの日の夜半、突然、日蓮は移送する支度を侍頭(さむらいがしら)に促(うなが)された。深夜のことですが、邸の門前には二頭の馬が用意されています。一頭の馬には日蓮が乗り、もう一頭の馬には侍頭が乗りました。日蓮に随行したのは日興ら数人の若い門人と少年の熊王(くまおう)でした。

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